まえがき

 

 長野佐久伝道所に赴任して最初に手掛けた連続講解説教がここに収録される『ヨハネによる福音書』です。牧師の勉強からすれば一連のルカ文書に手を付けたかったのですが、すでに他の教師が行ったとのことで、「ヨハネ」をすることにしました。私にとっては三度目の連続説教で、本書の目的は、聴衆一人ひとりが主イエス・キリストと真の出会いを果たし、揺らがない信仰の確立を目指すところにあります。最初の説教で触れていますが、「ヨハネ福音書」は決してわかりやすい書物ではなく、非常に深い神学的な洞察を含んでいます。それだけに、集中と習熟が必要ですが、散漫になりやすい我々プロテスタントの信仰には、大いに有益な働きをしてくれます。別の観点から言うと、ヨハネ文書の特質は、非常にユダヤ的であると同時に神秘主義的です。論理的にだけ教理を追求しようとすると本書を読み違えます。深い瞑想の中で三位一体の神との交流を目指す本書が、学ぶ者をその霊的交流に招き、キリストの言葉が生きる今を体験させてくれることをこの説教も目指しています。長野佐久伝道所も教会設立を目指す途上にあり、御言葉に確かに聞く姿勢を整えたいと願っています。二つの会堂で交互に説教をしていますので、普通の倍の時間がかかりますが、御言葉が教会を建てあげることを信じて今も説教を続けています。当教会は日本聖書協会による『聖書 新共同訳』を用いていますから、説教で引用されている聖書の文言は『新共同訳』からのものです。主日礼拝でなされた説教はその場限りのものですが、信仰の知識を蓄えるためにもこうした説教集が用いられることを期待して、これを出版する運びになりました。幾つかの注解書や説教集を参考にしていますが、私なりに原典から読み解いて得たところの新しい視点も盛り込んでいますから、聖書の学徒を志す兄弟姉妹には興味深く接していただけるだろうと思います。書物が読まれない時代ですが、今年の新型コロナ・ウイルス騒動にあって、集会に出席できないまま家庭礼拝をおこなっている方々がいますから、そうした兄弟姉妹にも用いていただければ幸いです。聖霊なる神は、たとえ私たちがどこにいても、神と教会との豊かな交わりの中で私たちを養ってくださいます。

 

あとがき

 

 本書に収められた説教のために用いた参考書は以下の通りです。最も啓発されたのは大貫隆先生による『ヨハネによる福音書―世の光イエス』(福音書のイエス・キリスト四、日本基督教団出版局、一九九六年)です。講解説教をする時には必ずその書物についての聖書神学を学んで、全体像の把握に努めることにしています。併せて参照したのはD・M・スミス著『ヨハネ福音書の神学』(叢書 新約聖書神学③、松永希久夫訳、新教出版社、二〇〇二年)です。注解書はブルトマン、バルトの他、アウグスティヌス、オリゲネスら教父たちの講解を参照しています。カルヴァンの聖書注解と榊原康夫先生の説教集は黙想・対話のテキストとしています。釈義には聖書ソフトのバイブルワークスを愛用していますが、その中にヘブライ語訳も含まれていて、ヨハネの語法を調べるのに重宝しています。

 丁度この連続講解説教を続けている最中の二〇二〇年二月に脳梗塞で倒れて入院治療することになりました。その期間、教会では濱民雄先生や宮﨑彌男先生など教会に在籍しておられる引退教師をはじめ、伝道所の委員の兄弟たちに説教の代読をしてもらいました。それも長老任職に向かう途上にあっての良い訓練ではなかったかと思っていますが、聴衆からの評判も良く、ご奉仕に感謝しました。その後、看病に駆けつけてくれた旧い友人である井上有子姉と結婚することになり、退院の日の当日に濱民雄教師の司式によって佐久会堂で結婚式を挙げることができました。妻有子は英語力に堪能で今翻訳と通訳の仕事を得て奮闘中です。日頃、聖書研究に関する並みならぬ関心をもって質問をしてくれますので、今や私の説教の第一の聴衆であると同時に聖書学の一番弟子となっています。彼女の訳書がまもなく「いのちのことば社」から刊行される予定で、彼女の賜物を用いた本格的な働きのスタートを心から喜んでいます。

 私は大会教育委員会に配属されて教会学校教案誌の編集を手掛けてきましたが、今後の教派の教育的営みについて考えあぐねています。文字離れの加速する時代に教育は如何にして継続可能であるか。その一つは出版事業にあるのではと今は考えています。キリスト教でもユダヤ教でも伝承された文書をまとめてアーカイブする丹念な事業に精を出した時代があったと思います。それを遺産として次の時代に備えたことが歴史に耐え抜く強靭さを教会にもたらしたのではないかと思います。日本キリスト改革派教会も先輩方の翻訳や講演・執筆を書物にして世代を継承して今に至ります。それが途絶えている今日だからこそ出版の努力を続けるべきではないでしょうか。

 

 本書の出版に当たっては日本キリスト改革派教会東部中会まじわり出版委員会の支援をいただきました。労をとってくださった石原知弘委員長・小宮山裕一先生はじめ委員会の皆様に感謝します。また、この説教を聞いて教会を支えてくださっている千里山教会、西神教会、長野佐久伝道所の兄弟姉妹方に、いつまでも変わらない御言葉の祝福を心から祈ります。

 

 2021年12月25日 

中込にて 牧野信成

≪新刊のご案内≫

『人を造り上げる神の言葉―ヨハネによる福音書講解説教上下巻』

説教者:牧野信成(長野佐久伝道所宣教教師)

この度、東部中会まじわり委員会の協力を得て、『人を造り上げる神の言葉―ヨハネによる福音書講解説教上下巻』を発行することができました。これは、教会設立を目指して2018年より長野佐久伝道所で牧野信成牧師が行った講解説教を元にしています。上下巻1セット5,000円でお分けしますので(一般書店では扱われません)、ご希望の方はメール/ファクスなどでご注文下さい。売上金は出版費用を立て替えてくださった「まじわり委員会」にそのまま返却する予定です。また、以前の説教集の在庫もありますので、この機会に改めて購入いただけると感謝です。個人のデボーションのために、また祈祷会のテキストとして用いていただけるなら幸いです。今日、こうした書物の出版は個人負担に任されており、続く説教集の出版等も計画はありますが実現が困難です。続刊発行のためにも既刊の説教集の販売が必須となっています。ご協力いただければ今後もこうした働きに努力したいと願っていますのでよろしくお願い致します。教会でまとめてご注文いただくと送料が軽減できると思います。

 

① 人を造り上げる神の言葉-ヨハネによる福音書講解説教集上下巻

1セット 価格5,000

② 教会を建て上げる神の言葉-マタイによる福音書講解説教集上下巻

1セット 価格5,000

 ③ 旧約のアドヴェント-士師記講解説教(一麦出版社) 2,000円/冊

 ④ 巡礼歌―詩編120-134編講解説教(一麦出版社) 2,000円/冊

 

 

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